五輪モード

遅ればせながら、DIME増刊『The JAPAN BLUES』(1800円)を購入。お目当てはアテネ予選・練習・ミーティング時の映像(55分)の入ったDVDと『勝ちドラ・超特大フラッグ』。おまけの雑誌も読んでみた。


森崎浩司駒野友一の対談。ユース時代からの親友ということもあって笑ってばかりのインタビューだったのだが、最後に

森崎浩司
「昔みたいに自分から崩れたりすることはもうないですね。試合出られないからって落ち込むことはない。試合に出られなくとも、チームのために頑張ろうっていう気持ちになれる。その辺は自分が成長したところです。今はもう出られなくてもネガティブにはならないです。僕は森保一の7番を背負っているんですから

やべぇ・・・。涙腺、緩んだ。他の誰でもない、森保だからこそ。


さらに、澤穂希のインタビュー記事。

澤穂希
「人から聞いた話なんですけど、メダルって空港の金属探知機鳴るらしいですね。でもね、預ける荷物には絶対入れたくないし、ずっと、肌身離さず持って帰りたいんですよ。だから、もし探知機鳴ったら、もうね、堂々と見せますよ。『これだよ!私が取ったんだよ!どうだっ!』ってね(笑)」

さすが、澤。アジアカップの余韻も一段落して、オリンピックに向けて盛り上がってきたぜェ!皆さんは如何ですか?

中国サッカーが飛躍するとき

将来的に中国がサッカーにおいてもとんでもなく強くなるのではないかという話が、昔から繰り返しなされてきた。確かに色んなスポーツにおいて中国が世界トップレベルにあるのは事実であり、やはり十三億人の人口は侮りがたいものはある。


しかし、これまで中国代表がサッカーの世界で真に大きく躍進したことはない。W杯出場もアジアカップ決勝進出も、実力以外の要因が大きいことは明らかだ。むしろ長期的にみれば、70~80年代にカモとしていた日本に、90年代に抜き去られてしまったというのが歴史的事実である。


それでも世界一の人口と、近年の経済的躍進、あるいは80年代までのオールドファンのトラウマを背景に、中国脅威論が定期的に繰り返されている。例えば十年近く前に中国サッカー界が選別した少年を大量にブラジル長期留学させるというプランが実行された時に。Jの優勝チームがアジアクラブ選手権アジアカップウィナーズカップなどで上海申花大連実徳などの強豪チームに敗れ去った時に。あるいはCリーグ人気チームにおける育成環境の素晴らしい充実ぶりが報道された時に。未来の中国サッカーを恐れる人が、日本のコアなサッカーファンの中にも多くいたのだ*1。最近でもこういった意見の方もいらっしゃるようだ。


僕自身も、将来的に中国サッカーが脅威になることは有り得ないことでは無いとは思うが、それは海外在住の中国人が中心になったり、一部のエリートが鍛えられた結果としてもたらされるものだとは考えていない。海外在住の中国人はとんでもない数がいるが、フィリピンやトルコ、中南米などの出稼ぎ大国とはかなり形態が違う。基本的に彼等は華僑であり、商業指向が強く、教育レベルが高い。サッカー選手を多く輩出する社会層ではないのだ。


また、身体能力の高い少年を集めて行われるエリート教育は、マイナースポーツでは有効だが、サッカーに関しては、元々サッカーの裾野がある国でなければ機能しないのではないだろうか。韓国や中国の現在のレベルが少人数エリート教育で到達できる最大レベルだと思うのだ。(韓国のW杯4位は、ホームで熱狂した韓国気質と、半年間のリーグ中断を利用した究極的コンディショニング・ケアによる瞬間最大風速という意見がどこかのサイトに書かれていたが、僕も同意である)。裾野無きエリート教育をいくら先鋭化したとしても、その先へ進むことは至難の業と言える。ドイツですら、育成システムが有効に機能せず、あの現状である。フランスにおいても20年以上の積み重ねがあってようやく素晴らしいFWが出てきたが、以前はFWを育成できないと揶揄されていたのだ。エリート教育も簡単ではない。


個人的にこれまで数十人の中国人と知り合って来て、強く印象に残っているのは、彼等の卓球の平均レベルがとても高いということだ。よく知られているように、中国では野外の公園にすら卓球台が置いてあったりして、卓球環境・プレー人口においては圧倒的世界一位であり、故に中国は卓球王国なのだ。この現象は、そのへんの一般ブラジル人でも異様にサッカーが上手ヤツがたくさんいて、たいがいの日本人なら草野球くらいはできるのと同様であろう。逆に言えば、中国が本当に世界のサッカーシーンを席巻することがあるとすれば、中国サッカーの裾野が本当に拡がった時であるに違いない。


もちろんこれは日本にも当てはまる話である。海外へ観戦にいったときに気が付くのは、試合が始まる前や後に、他国の連中が戯れにボール蹴っている場面をみても、強豪国のヤツらは一般人でも明らかにボール捌きが上手いということだ。対照的に日本人の場合、部活やクラブでサッカーやっていた人とそれ以外では雲泥の差がある。


その視点に立つと気になるのは、こういうニュースだろう。W杯出場やアジアカップ決勝進出そのものよりも、それをリアルタイムに観た少年達によって、中国サッカーの裾野が少しでも拡がるとしたら、それこそ脅威である。イラクセルビアなどの戦禍に見舞われた国々と並んで、未だ立ち後れている中国農村部こそ、現在、世界で最もストリート・サッカーが似合う地域なのかもしれない。そんなことを考えている僕にとって、中国サッカーに関する今最大の興味事項は、『日本に負けて悔しがった翌日にボールを蹴っていた中国の少年達はどれだけいただろうか?』ということだ。


日本では七年ぶりに子供のあこがれの職業でサッカー選手がNo.1に返り咲いたという。一時のJリーグ人気下降や経済状況の悪化を乗り越えて、地道に頑張ってきた関係者の努力の結晶だと思う。これからも数多くの日本の子供達がサッカーを楽しんでくれることを願って止まない。そして、日本の少年達と中国の少年達が、いつの日かA代表として国際舞台でフェアな戦いを繰り広げてくれる様を夢想して止まない。


(ちょっと硬めの文章で書いてみました)

*1:僕も以前、Cリーグが始まり球迷と呼ばれる人々が現れたころには、中国サッカーに大きな脅威を感じ、強い興味を寄せていた。98年に始まった神田サッカーナイト第9回「中国サッカー事情」に、情報収集がてら参加したり。