3連休もインドア

まだ手術から1週間しか経っていないので自重して過ごしました。


ツィゴイネルワイゼン [DVD]

ツィゴイネルワイゼン [DVD]

20年以上前に観ようリストに載っけていたのに、ずっとそのままになっていたこの映画をようやく観ることが出来ました。


日曜の昼間に部屋を暗くして一人で観るのにはドンピシャ最適な、白昼夢のような映画。生と死、夢と現が、いつの間にか混じり合い、なんともシンボリックなシーンが多くて、後で自分の夢の中にも出てきそうです。それにしても、原田芳雄の存在感が強烈すぎ。


なにしろ夢みたいな曖昧な話だから、いろんな深読み解釈ができてしまうところも、熱烈な支持者がいる所以かもしれません。



脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち

脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち

シベリアの強制収容所を脱出してインドまで歩いて逃げた人達の実話。もー読んでいて「いやいやいやいや、絶対無理だから、それ!」と何度突っ込んでしまったことか。


ユーコン川を一人旅していたときに、予定通りではあるのだけれど、村もない荒野の中でどんどん食料が減って行くのは、一匹の動物としてもの凄い恐怖を感じました。最後に食事をしてから1週間以上経って、それでも毎日移動するとか自分には無理っす、ホント。もしも自分が強制収容所に入っても、脱走するのはやめときたいと思います(笑)。


でも、この本を読んで、自分なりに冒険的な旅行がしたいなぁという意欲がまた沸々と湧いてきましたです。世間的に冒険でなくても全然OKで、自分にとって新しい世界にエイヤッと一歩踏み出すような、そんな一人旅をまたしたいなぁ。



重力ピエロ

重力ピエロ

レーシック手術後の1週目検診を受けるために新宿まで往復している間に読了。やっぱり電車に乗っている時が本を一番集中して読めるんだよな〜。学部生時代は往復3時間の通学だったので、週数冊のペースで乱読していたもんです。今は徒歩or自転車通勤なので、まー読書量はお寂しい限り。勤務地からある程度離れて住んだ方が良いのかもなぁ。


この小説は語り方が上手くて、グイグイ引き込まれます。なるほど、売れたミステリーだけのことはありますね。


結びつきが濃すぎるがゆえに、世の中から精神的に隔絶しているかのような主人公兄弟、家族のありようが、妙に読後の印象に残りました。


伊坂幸太郎は映画監督山下敦弘とコラボしてTheピーズ実験4号という曲へのオマージュ作品を作ったことがあるのだけれど、この小説の主人公の弟の名前「春」はピーズの「はる(Vo&Bass)」から取ったのかなぁ。



輝ける闇 (新潮文庫)

輝ける闇 (新潮文庫)

開高健は、時々、凄く劇的な修辞技法を駆使しますね。この本の冒頭近く、ベトナムのジャングルの中でアメリカ軍大尉とバーボンを飲み交わすシーンをちょっと長いけど引用します。

 ジャングルは長城となって地平線を蔽っている。その蒼暗な梢に夕陽の長い指がとどきかけている。農民も子供も水牛もいない。謙虚な、大きい、つぶやくような黄昏が沁みだしている。その空いっぱいに火と血である。紫、金、深紅、紺青、ありとあらゆる光彩が今日最後の力をふるって叫んでいた。巨大な青銅盤を一撃したあとのこだまのようなものがあたりにたゆたって、小屋そのものが音たてて燃えあがるかと思われる瞬間があった。
 大尉は強い首をひねり、
 「静かだ」
 とつぶやいた。
 私はグラスをおいて、
 「美しい国だ」
 といった。
 ルビーかガーネットの内部、その核心に佇んで酒を飲んでいるようだった。陽が傾くにつれて黄昏は燦爛から凄壮へ、凄壮から痛惨へと変わり、光輝が肩をなだれおちていき、やがて夜が薄い氷のように小屋のすみからにじんで物の腰を浸しはじめた。グラスの底にはとろりとした輝きが小さくたまり、瓶の肩にものうげなサフラン色が燦めいている。私は素娥のことを思いだした。

迫力のある光に満ちた情景が浮かんで来ますね〜。