今日読み終わった本。

下のエントリを書いた後で、読みかけの本を急遽読了。本自体は昨年夏に出版されたもの。


小倉純二サッカーの国際政治学
2002年に小倉純二FIFA理事になった時、よっしゃ!っと拳を握ったものだ。FIFAの内部で発言権と投票権を持つことの意味は重い。ましてや、日本は94年に韓国・現代グループの御曹司である鄭夢準に惨敗したのに始まり、97、98年の三度続けてアジア内のFIFA理事選に敗北していた。


国家予算を潤すほどの巨大利益を生み出すW杯開催を巡る争いは、まさに国際政治の駆け引きそのもの。スポーツマンシップよりもパワー・ポリティクスの世界だ。そんな戦いの最前線に今まさに立っている小倉純二が、その内幕を明かすのだから面白くないわけがない。


たとえば、97年アジア地区最終予選3位決定戦がジョホールバルで開催されることになった経緯と、日本サッカー協会のプラッター会長への働きかけについて。2002, 2006, 2010年W杯開催国決定を巡る駆け引きの数々。FIFA内部の権力闘争。W杯の日本対トルコ戦で700席もの空席ができた理由。スタジアムのトイレから見えてくる各国事情。JFAFIFAの財政状況*1等々。コアなサカファンなら周知なことも多いが、当事者ならではの生々しい描写が新鮮だ。


サッカー国際政治の世界は単純な構図では捉えきれない。対立軸は複雑に積層し、入り乱れ、刻々と移り変わり、様々な確執・義理・人情・利権・理想が渦巻いている。それら何もかも含んでサッカーだと言うしかない。サカファンである僕らは、通りすぎるその全てを見届けよう。

*1:FIFAの99~02年の3年間の総収入は2.2兆円。支出の24%が発展途上国への援助。